認知症になっても輝けるまちへ ~100万羽の折り鶴と伴に~
ゆめ伴(とも)プロジェクトin門真実行委員会
ゆめ伴(とも)プロジェクト in 門真実行委員会
〒571-0064 大阪府門真市御堂町14-1 門真市社会福祉協議会内
TEL:06-6902-6453
yumetomo.kadoma@gmail.com
https://www.yumetomokadoma.com
プロジェクトの概要
本プロジェクトは、自宅や施設で折り鶴を作る「おうち万博ボランティア」の活動を通じて、全国の認知症の方と地域の方々との新たなつながりを創出し、認知症の方が主役となって大阪・関西万博の担い手となる取り組みです。そして「認知症になってもいのち輝く未来社会」のモデルとして世界に発信していく活動になります。
認知症になっても絶望ではなく希望を、孤立ではなくつながりを、あきらめではなく夢をもつことができる「認知症になってもいのち輝く社会」を、関わりを持ったすべての方と共に実現していきます。
認知症になっても地域の一員として輝ける場所を
今回は、ゆめ伴プロジェクトin門真実行委員会の総合プロデューサーである森安美氏にお話を伺いました。
ーー「ゆめ伴プロジェクト」が立ち上がった経緯を教えてください。
森氏 きっかけは介護するご家族からの一言でした。
「認知症になっても、以前のように輝ける場所ってないんですか。」
日本では認知症になったら、基本的にはデイサービス、ショートステイ、施設入居など介護保険制度の中でどのように暮らしていくかを考えることが一般的です。認知症の方に対するケアとして、医師、看護師、介護福祉士、ケアマネージャーなど様々な職種がチーム連携してその方を支援します。ただそれはあくまでも介護保険内の話になります。
実際認知症になると、買い物など外出を1人ですることは難しくなりますし、普段から通っていた地域高齢者が集う場に顔を出すことも、家族が引け目を感じて行かせなくなったりするケースもあります。以前は当たり前のようにしていた「自分らしい」行動ができなくなり、地域の一員であることに変わりはないのに、認知症であるというだけで社会との関わりが閉ざされてしまうのです。
当時、私はケアマネジャーをしていたのですが、この介護するご家族から相談を受けた際に「認知症になったからといって、母には希望を失ってほしくない。できることも、やりたいこともまだまだあるはず。」というとても強い思いをお聞きしました。ただ、当時認知症の方が自分らしく輝けるということをテーマにしたような場は少なく、それであれば認知症の方が主役となって地域の一員として活躍し、輝ける場や活動をもっと創っていこうと、門真市介護保険サービス事業者連絡会と門真市社会福祉協議会、くすのき広域連合門真支所、地域活動団体が連携し「ゆめ伴プロジェクト㏌門真実行委員会」を2018年4月に発足しました。
認知症になっても夢をかなえる道のりを、まち全体で伴走していこうという思いを込めて「ゆめ伴プロジェクト」と名付けました。
ーーこれまで、どのような活動を行ってきたのでしょうか?
認知症や高齢者の方の声を一つずつ拾い上げ、活動を展開してきました。立ち上げから2年ほどかけて、認知症の方が主役となって活躍するゆめ伴カフェ、畑作りやスポーツイベント、コンサートなど7つの活動を創出しました。
中でも、「ゆめ伴カフェ」はとても好評で定期的に開催していました。(現在はコロナ禍のため休止中)
地域のカフェを借りて、介護するご家族や関係者がお客様、認知症の方が店員を務めて、おもてなしをするという取り組みです。過去の職業などから得意な事を活かした役割につき、接客業や調理場を認知症の方が担当するのですが、皆さん、本当にイキイキと仕事をされるんです。介護するご家族の方も「母がこんなに楽しそうにしているのを、久しぶりに見ました。」と喜んでおられました。もちろん、私たちがサポートに入ることもありますし、オペレーションが上手くいかないこともあるのですが、その空間にはとても心地よい緩やかな時間が流れていて、サポートをしているはずの私たちが、逆に認知症の方に癒されているような感覚になるんです。普段は支援を受ける側の認知症の方がひとときだけでもそうでない側に回れ、支援する人とされる人の境目がなくなり、それがお互いにとても心地よく、回を重ねる度に参加者も増えていきました。
ーー「認知症の方が輝く」とは、具体的にどういうことなのでしょうか。
森氏 認知症になると出来なくなったことに目がいきがちなのですが、その方の得意なことや好きなことにフォーカスして今できることを見つけて、活躍できるよう活動をしていくことが「輝く」ということだと考えています。そのような輝ける場所や取り組みを創出することが私たちの役割です。
介護保険には、認知症の方が安心・安全に暮らしていくためのサービスとして「Cure:治療」と「Care:介護」があります。要するに、認知症という病気と共に生きていく上でマイナスの状態にある暮らしを、できる限りゼロの状態に戻すことが介護保険のゴールという認識です。それに対し、私たちが取り組んでいる地域活動の中核にあるのは「Communication:人と人とのつながり、コミュニケーション」で、もっと豊かに、もっと幸せにというプラスの要素になります。この3つの「C」が三位一体となって認知症の方を支えることで、病気になっても人間らしく豊かに生きていけるのではないかと考えています。
従来の集い型から「スティホーム型地域活動」へ
ーー「折り鶴プロジェクト」が生まれたきっかけを教えてください。
森氏 2020年、コロナ禍になりこれまでのような集い型の地域活動がほぼできなくなりました。
初めての緊急事態宣言下、皆が不安に包まれていた中、認知症の方が折り鶴を折ると心が安らぎ笑顔になれたという話から、それなら他の市民団体や企業と共に、人と人とが会えなくても「折り鶴」でつながろうと広く市民に声をかけ、門真の地域全体を巻き込んだ「かどま折り鶴12万羽プロジェクト」を展開しました。
これは、認知症の方に自宅や施設で折り鶴を折ってもらい、それをスタッフが回収したり、地域の銀行や商業施設に設置した回収ボックスに介護するご家族が届けてくださったりなど、地域が一体となってプロジェクトに関われる取り組みになりました。結果、集まった15万羽の折り鶴を市内のホールにアート作品として展示し、地域に大きな感動が生まれ、多くのメディアで紹介していただきました。
この取り組みによって、自宅や施設から「折り鶴を折る」という行動を通じて、直接会えなくても前向きなコミュニケーションを図れることが分かりました。また、自分一人だけがリハビリのために鶴を折っているのではなく、離れている仲間と共通の目標に向かって行動しているということが、認知症の方のやる気を引き出し、達成感や生きる楽しみにつながっていったと感じています。
また、介護状態によって折る工程を分業することで、要介護度の高い方でも本プロジェクトに参加できたということは大きな気づきでした。今までの集い型地域活動は、実はごく限られた人たちにしか届いていなかったのだと知り、この仕組みを活用すれば全方位型で認知症や高齢者の方とのコミュニケーションが図れるので、withコロナを見据えた新しいスティホーム型地域活動として根付かせていけるのではないかと考えています。
万博までの道のりを共有し、いのち輝く時間を生み出す
ーードバイ万博や今後の取り組みについて詳しくお聞かせください。
森氏 門真の折り鶴プロジェクトが一区切りした後、参加者から「もっと折りたい!」「次は何するの?」といった声がたくさん寄せられました。そこで、高齢者にとってはパワーワードである「万博」にスポットを当てた取り組みをしようと、次なる目標を大阪・関西万博とし「100万羽の折り鶴プロジェクト」が立ち上がりました。
本プロジェクトは、2025年の万博開催までに100万羽の折り鶴を全国の高齢者が一体となって作り、それを万博会場に飾るという活動です。これは会場で折り鶴を飾ることが目的なのではなく、そのプロセスを通して、地域社会から孤立しがちな認知症の方が地域社会や周囲の方々とつながることで笑顔になり、それが一人ひとりのいのち輝く時間の創出になることを狙いとしています。またこの取り組みを全国規模の活動へと発展させることができれば、多くの認知症の方が輝けるのではないかと考えています。
これらを踏まえて、2021年6月に「TEAM EXPO 2025」プログラムの共創チャレンジとして登録しました。登録をきっかけに様々なチャレンジ団体と共創することができ、2021年ドバイ国際博覧会の日本館で来場者にプレゼントする「おもてなし折り鶴」を、認知症の方や高齢者、企業の方々と共に製作に取り組むことができました。
このような認知症の人が主役となって活躍する様々な取り組みが高く評価され、2021年12月に「第5回ジャパンSDGsアワード」で特別賞をいただくことができました。
第5回ジャパンSDGsアワード「特別賞」をゆめ伴プロジェクトが受賞!
https://www.yumetomokadoma.com/blank-1
https://team.expo2025.or.jp/ja/post/125
このプロジェクトが始まって数年「認知症の方が輝くために」という思いだけで活動を重ねてきましたが、気がつけば認知症の方を中心に様々なコトが動いていると感じます。認知症の方が活躍することで、皆が緩やかにつながりあえている、まさに認知症の方が主役となって輝く未来社会に少しずつ近づけているのではないかと思います。
認知症になっても輝ける社会づくりは、認知症を自分事とすることから。
ーー最後にメッセージをお願いします。
森氏 このプロジェクトを実現させるためには、社会的に脆弱な立場にある認知症の方がまちづくりの主人公となる活動であることに共感してくれる多様な方々や団体、企業と共創していくことが実現のキーポイントになると考えています。お住まいの地域でも認知症に関する講座や、様々な活動が行われていますので、ぜひ関心をもって参加してほしいです。
人生100年時代となり、認知症が他人事ではなく自分事である時代でもあります。
認知症になっても輝ける社会を、私たち一人ひとりが自分事として創り出すことで、私たち自身の老後も、認知症になっても豊かに幸せに生きていけることにつながると思います。
本日はありがとうございました。
ゆめ伴(とも)プロジェクト in 門真実行委員会
〒571-0064 大阪府門真市御堂町14-1 門真市社会福祉協議会内
TEL:06-6902-6453
yumetomo.kadoma@gmail.com
https://www.yumetomokadoma.com