キャップがキャップに戻る世界を目指して
日本山村硝子株式会社

日本山村硝子株式会社
兵庫県尼崎市西向島町15-1
https://www.yamamura.co.jp/
プロジェクトの概要
今回はペットボトル飲料のプラスチックキャップをリサイクルする[REBORN CAP PROJECT]に取り組んでいる日本山村硝子株式会社の活動をご紹介いたします。お話してくれたのは同社のプラスチックカンパニーの山村啓氏、林恭広氏、菅由幸氏の皆さんです。
水平リサイクルを生み出した企業の新たな挑戦
ーーまず、日本山村硝子株式会社の事業内容を教えてください。
はい、当社は「日本山村硝子」の名前の通り、ガラスびんの開発・製造・販売をメインとしている企業です。ガラスびんのシェアにおいては日本で一番のシェアを頂いていまして、国内の約40%のガラスびんを出荷しております。
その会社において、私たちプラスチックカンパニーは飲料用のプラスチックキャップを中心に取り扱っており、年間約37億個のプラスチックキャップの製造・販売を手掛けています。プラスチックカンパニーでは飲料用プラスチックキャップ事業がメインとなるのですが、2020年に医療介護分野でのファーマキット事業グループ、2022年には地球環境事業にも取り組むアースケア推進グループを立ち上げ、現在は3つの柱で構成されているカンパニーとなっています。
日本山村硝子株式会社プラスチックカンパニー 営業部大阪営業課 CtoVリサイクリングAチームリーダー ファーマキット事業セールス担当
山村 啓氏
ーー[REBORN CAP PROJECT]は どのようなきっかけで始まったプロジェクトですか?
実は、現代で当たり前となっている「ガラスびんがガラスびんとして生まれ変わる」水平リサイクルの仕組みを世の中に生み出したのは、私たち日本山村硝子です。近年、ペットボトルの本体部分の水平リサイクルにおいては非常に取り組みが進んできました。こうした背景を踏まえ、ペットポトルキャップにおいても水平リサイクルを実現したいと考え【REBORN CAP PROJECT】が誕生しました。
2022年頃に数名から始まったプロジェクトですが、2023年4月には本格始動となり、現在ではアースケア推進グループだけでなく他部署や他社も巻き込んだプロジェクトとなっています。また【REBORN CAP PROJECT】としては「Cap to Cap」を目指すペットポトルキャップの水平リサイクルの側面が強いですが、キャップに新しい価値を生み出す「Cap to Value」として別の製品へのアップサイクルも視野に入れた2軸での取り組みとして動いています。
SCM本部ファーマキット事業グルーブ (兼)アースケア推進グルーブリーダー 林 恭広氏
SCM本部アースケア推進グループ課長 菅 由幸氏
ーー具体的にはどのような活動を行っているのですか?
ペットポトルキャップのリサイクルには「回収」「加工」「製造」の3工程があります。
まず「回収」においては、当社内の自動販売機などに回収BOXを設置して集める、身近なところからスタートしました。そこから現在では取引先の小売店舗や学校などへと広がり、今も回収活動を行っています。その中で工夫した点としては、回収協力者にポイントカードを発行して、貢献いただいた数(回収数)をポイントとして記録できるような回収BOX をつくり、ポイントは景品と交換できるようにするなど、楽しみながら回収できるような仕組みを作りました。また、大学様との共同研究も行っており、近畿大学様とはペットボトルキャップを投票用紙代わりとする「投票型回収BOX」を作成しました。この研究では、飲み終わったペットボトルからキャップを外してキャップの回収ボックスに入れる行動を誘発する行動変容を狙っています。この投票型の回収BOX は、直近でも枚方市の環境イベントに出展させていただいて好評をいただきました。このように「回収」工程においても、当社は現場に入って活動していますが、現段階では数を多く集めることよりも、ペットポトルキャップのリサイクルに関心を持ってもらうための啓蒙活動の側面が強いように思いますね。
「加工」工程は回収したペットボトルキャップを選別して、原材料に戻す部分です。ペットボトルキャップにはポリプロピレンとポリエチレンの2 種類があり、その選別やプラスチックの細かなチップである「ペレット」に戻すところを協力していただいているリサイクラー様に担当してもらっています。
そして最後の「製造」工程になりますが、実は市場で回収されたペットポトルキャップの水平リサイクルは、現段階では食品衛生法上の課題があり難しいのが実情です。しかし、ペットボトル本体の水平リサイクルの場合でも同じ状況でしたが、リサイクル技術が開発され確立されることで、法律としても認められる可能性があることはわかっています。その技術開発の部分を化学メーカーであるプライムポリマー様と共同で研究を進めています。
一方で、別製品へのアップサイクルする「製造」という部分では、神戸市でプラスチック資源の活用を目的とした「J-CEP」にもメンバーとして参加し、様々な製品へとリサイクルをしました。またATC グリーンエコプラザにはファブラボ広島安芸高田様で行われたイベントで参加者の皆様と一緒に作成した「循環ガチャModel-L」を展示しております。このカプセルトイはペットボトルのキャップを5 個使って回すことができ、景品にはキャップ再生材を使用したアップサイクルグッズが出てきます。当社ブースを通じて、ペットボトルキャップの資源循環について少しでも感じてもらおうと思っています。また、商業ベースでは、スーパーのカゴやボールペンなどにアップサイクルしたことが実績としてあります。
編集部注)
2024 年12 月には、キリンピール株式会社様と協力し、ペットボトルキャップの外装部にリサイクル樹脂を10%混合した2 ピースキャップを期間限定で導入する実証実験を実施しました。これは、酒類飲料のペットポトルに使用するキャップから同ーキャップヘの水平リサイクルの実用化において日本で初めての取り組みです。
実証実験で使用されるペットボトルキャップは、製造する工程で発生した廃棄キャップをメカニカルリサイクルし、内装部(食品接触)と外装部(食品非接触)の2 つに分かれている2 ピースキャップの外装部にリサイクル素材を10%混合したものです。中味に直接接触しない外装部のみにリサイクル素材を混合することで、キャップヘの使用を可能としています。
プロジェクトの仲間を集め、さらなる啓蒙活動に邁進
ーー現在の課題はどのようなことですか?
ペットボトルキャップのリサイクルに対する実情がまだまだ知られていないところですね。リサイクルは環境に良い事は皆さんご理解されているのですが、リサイクル品となると価格的も安価に抑えられると思われがちです。もちろん一部安価になる場合もありますが、実際は手間やコストが必要となりますので、良い事だとは理解しているが、コスト面も含めて採算の取れる確証が無いと実施できないという企業様が、現状では多いですね。
技術的な課題でいえば、良い再生材にするためには回収したペットポトルキャップを高精度で選別しなければいけません。例えば、キャップを色や材質で機械選別する場合は、現状の精度では繰り返し何度も選別しなければならず、余計な手間やコストが掛かってしまいます。そのような課題を今後はAI などの先端技術を使って克服できる仕組みが作れればと思っています。
ーー今後の展望について教えてください。
【REBORN CAP PROJECT】において当社単体で出来ることは限られています。リサイクルの啓蒙活動でもATC さんを始め、日本キャップ野球協会さんや近畿大学さん、枚方市さんなどにも協力いただいていますが、これからもいろいろなパートナーを増やして、一緒に様々な取り組みが出来ればと考えています。ペットボトルキャップ回収のネットワークにおいても、日本全国の学校や企業からお問い合わせをいただくことが増えてきましたが、まだまだ足りていません。ご参加いただける団体や企業さんがいらっしゃいましたら、ぜひご連絡をいただければ嬉しいです。
また、2025 年3 月15・16 日にATC で開催されるイベントでもブース出展を予定しており、来る4月開幕の大阪・関西万博においても共創チャレンジのプロジェクトとして登録しております。特に大阪・関西万博は国内外の多くの方にペットボトルキャップのリサイクル活動について知っていただける絶好の場なので、この機会に多くの方にペットボトルのリサイクルについて考えるきっかけにしてほしいなと思います。
日本山村硝子株式会社
兵庫県尼崎市西向島町15-1
https://www.yamamura.co.jp/