空気が「見える」を身近に。「ミルカゼ」プロジェクト
ホルトプラン合同会社
ホルトプラン合同会社
大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟6F
06-7878-8911
http://www.hortplan.co.jp
※ソフト産業プラザTEQS入居企業
https://teqs.jp/incubator/holtplan
ミルカゼWEB
https://www.mirukaze.jp
プロジェクトの概要
空気の質や流れは、人にとって冷温感にも影響を与え、快適性や、生産性・学習効率にも影響を与えることが明らかとなっています。また、風で病原体が運ばれる場合もあるため、感染症の感染拡大の要因になる場合もあります。しかし、多くの場所で、空気の流れの状況把握や可視化が十分にできていないという社会背景があります。
「ミルカゼ」プロジェクトは、一般の空間でも、気流可視化を容易にかつリアルタイムで実施できるようにし、感染症対策および脱炭素化社会の実現に寄与とすることを目的としています。
世界最小の3D風向風速センサを活用して、感染症対策や脱炭素化社会の実現に寄与する。
今回は、ホルトプラン合同会社の代表社員・社長である林氏にお話を伺いました。
ーープロジェクトが生まれた経緯を教えてください。
林氏 私達の身近に存在しているのに、簡単に見ることができないもの「空気」、そしてその流れの「気流」。これらを可視化するには、スーパーコンピュータなどの特別な装置が必要とされています。そして、こうした装置を活用するには、多くの手間と計算コストが必要となり、一般空間への利用は難しいと言われています。しかし、弊社が開発した世界最小の3D風速風向センサを用いれば、スパコンを使わなくても風の動きを迅速に把握できるようになる可能性があります。これにより、感染症対策や、脱炭素化社会実現に寄与できるのではないかと考え「ミルカゼ」プロジェクトをスタートさせました。
空気の質や流れは、人にとって冷温感に影響を与えるだけでなく、快適性や、生産性・学習効率にも影響を与えることが明らかとなっています。社会に重大な影響を与えている新型コロナウィルスについて、日本では飛沫感染が重要視されていますが、空気感染(エアロゾル感染)することが、2021年4月に厚生労働省からの通達でも示されています。しかし、飲食店やライブハウスなどでは、ウィルス対策用の換気装置や殺菌装置を導入したものの、設置位置や空調・換気の運用が、適切か否かの十分なエビデンスを、得られないままでいます。
一方で、脱炭素社会実現に向けた改革は、待ったなしの状態に来ており、早急に対策を進める必要があります。現在、建物の消費エネルギーの約3割は空調機器に使われていますが、制御を工夫することで、居住者に不快感を感じさせずに40%程度の消費エネルギーを削減できる可能性も研究機関から示されています。この実現の一つのキーは、気流の管理になります。
ーープロジェクトの鍵となる製品・サービスについて教えてください。
林氏 製品は、キーデバイスとなる世界最小クラスの3D風向風速センサです。
従来の風向風速センサに比べてかなり小型なため、屋内空間の実測に適しており、多点計測にも対応しています。このセンサは、測定原理から特許も取得しています。
弊社センサ事業では、センサデバイスやセンサシステムの開発・設計を行っており、特に気流や輻射熱を計測するセンサは、業界でもトップクラスの低コスト性と小型性だと評価頂いています。センサ事業は、大阪市の「大阪トップランナー育成事業認定プロジェクト」の認定事業でもあります。
その技術力を応用して開発を進めているのが、「ミルカゼ」プロジェクトです。気流の可視化で、富岳などスパコンで行われた飛沫シミュレーションが有名になりましたが、これを実施するには、空間や空調機器・人をデジタルデータで再現し、膨大な計算量を計算させる必要があるため、解析に時間も労力も費用もかかります。身近な空間で可視化したくても、気軽にできるものではありません。これを、センサも使って迅速・即時・手軽に空間の気流可視化、環境分布の可視化を提供できる仕組みを提供したいと思い、開発を進めています。これを実現するためには新技術の構築が必要ですが、出来るところからサービスを開始しようとしています。
直近では、まずは、換気シミュレーションサービスを提供していきます。
これはセンサを使ったものではありませんが、今の技術で、すぐに提供可能です。
従来のスパコンを使ったコンピュータシミュレーションは、手間がかかる上に高額で一般利用は難しいのですが、モデル作成をはじめ手間のかかる部分を簡略化し、換気に絞ることで安価にシミュレーションができるようにしました。これにより、気軽に身近な空間や建物、各部屋や各建物別に解析サービスを提供が可能になります。これを、「ミルカゼ」の最初のサービスとして、「Ven-Sim」の呼称でサービス開始します。
本サービスでは、換気の度合いを数値シミュレーションで計算し、その結果を画像や動画で提供しています。また、動画で換気の弱い場所や換気効率の低い場所を把握できる様になるので、重点管理ポイントを絞り込むとか、殺菌装置やCO2センサ、循環扇などの適正設置場所の選定にも応用できると考えています。
さらに、解析結果を来場者にお見せすることで、安心感を得てもらうといった活用方法もあります。
換気シミュレーション(例)
この次に、本題である、センサを使った空間の可視化のサービスを提供していきたいと考えています。まだ空間分解能は低いですが、現在、ATC内の実証実験制度(AIDOR EXPERIMENTATION)で、実証を重ねており、提供のメドが立ち次第、サービスインしていきます。そして、いずれ空間分解能の高い可視化に発展出来ればと考えています。
快適性を保ちながら、感染症・省エネ対策に貢献できる
ーー本プロジェクトのキーポイントを教えてください。
林氏 快適性を担保した上で、感染症対策、省エネ対策が可能になることです。
東日本大震災後に、電力不足等の影響から、東京周辺駅の照明がしばらくの間、全体的に暗かったり、空調が一部効いていないという「我慢する省エネ」を強いられた時期がありました。これは、省エネにはなっているのかもしれませんが、快適かといわれると生活の質を低下させます。生活の質を下げ、人が我慢して成り立つ省エネや感染症対策ですと、導入や持続性は得られないでしょう。ですから、今の快適性を維持したまま様々な対策に臨めることが鍵になります。そのためには、空気の流れを可視化し、それによって対策がさらに進み、一般に普及していくことが今後重要になると考えています。
ーー最後にメッセージをお願いします。
林氏 空調機器関連では、感染症対応や脱炭素化対応などで、空気の流れ把握することへの関心は高まっています。将来的には、街のあちこちに様々なセンサが配置され、それによって効率化・快適化され、生活水準を維持しながら省エネ化、脱炭素化された社会を実現できる世の中になるかもしれません。その時に、我々のセンサやシステムが、お役に立てていればと思います。
本日はありがとうございました。
ホルトプラン合同会社
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