~親子で絵の本ひろばを楽しもう!~ 絵本展DanDanプロジェクト
子どものデザイン教育研究所
子どものデザイン教育研究所
代表理事:北中正紀氏・ディレクター:北中賢治氏
活動拠点:大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟10-D-1-2(株式会社こふれ内)
https://coffret-design.co.jp/kids/
※咲洲こどもEXPO参加プロジェクト
プロジェクトの概要
『●あそび ▲まなぶ ■そだつ』がキーワードの「子どものデザイン教育研究所」が中心となり、2008年から毎年A T Cで実施している絵本展。「遊びから学ぶ」をテーマに子どもたちが自由に絵本を読み、安心して遊ぶことのできる温かな空間づくりをめざしています。約1,000冊の絵本がダンボール製の面展台や本棚に並び、また、ダンボール製の迷路やパズルで遊べるスペースを併設。子どもたちの想像力・創造力を刺激するワークショップも実施し、子どもたちに豊かな遊び・学びを提供しています。
※令和3年度子どもゆめ基金助成活動
絵本とワークショップで親子が遊べる場
ーー「絵本展Dan Dan」プロジェクトとは?
北中正紀氏(以下、正紀氏) 会場に約1,000冊の絵本を並べ、絵本と遊び、親子で両方が楽しめる空間を作っています。靴を脱いで座り込んで読めるスペース、靴のまま椅子に座って読めるスペース、どちらも用意しており、本の面展台や、イス・テーブルはすべてダンボールで制作。迷路やパズル、子どもたちが入られるドームなどもダンボール製なんですよ。主催しているのは、子どもたちの「遊び」「学び」に興味・関心を持つデザイナーが集まって立ち上げた「子どものデザイン研究所」。学校や幼稚園の先生方への講演会や遊びの提案などもしています。
北中賢治氏(以下、賢治氏) 絵本研究家の加藤啓子先生に企画の段階からご協力いただいており、絵本は毎年大阪市立中央図書館からお借りしています。加藤先生と私で選書しているのですが、できるだけ書店に並んでいない絵本を選ぶよう心がけています。ですので、子どもたちにとってあまり見たことのない本が並んでるんじゃないかな。また、一緒に来られる大人も子どもと一緒に楽しめるように料理本や写真集も多く並べています。
2021年の咲洲こどもEXPOでは、展示以外にも「紙にふれるワークショップ」として、ぶんぶんひこうきやダンボールイスを作るワークショップ、絵本作家みやけゆまさんの著作『チーターじまんの てんてんは』の“てんてん探し”など、子どもたちが手を動かしたり想像力を自由に働かせられるような企画を実施しました。
ーー絵本と遊び場が同じ空間にあるんですね
正紀氏 絵本を読むときの子どもたちの集中力は20分くらい。どうしても飽きてくるんですね。そこで、絵本を読む空間に遊ぶ場所を作ったら、少し遊んでまた絵本に戻っていくんじゃないか、と。静と動を往復してもらう、という形に発展しました。はじめは絵本を読む場に遊び場を併設することに対して議論もあったんですが、結果的にはとても良くて。本を読んでいる子と夢中になって遊んでいる子が同じ空間で過ごしている、という不思議な空間を作り出すことができました。
パッケージデザイナーとしての経験を生かして
ーーこのプロジェクト立ち上げのきっかけを教えてください
正紀氏 本職はパッケージデザインのデザイナーなんです。長年さまざまなパッケージを制作してきたので、構造デザインが得意で常に頭で考えたものを紙で試作してきました。あるとき、ダンボールを製造する会社から牛乳パックを再生して新しい丈夫な素材を作ったので、何か使い道がないか、と相談があったんです。ちょうどその頃にA T Cのイベントを企画する実行委員会に参加していて。そこでダンボール素材を使った子ども向けのイベントを提案したのがはじまりです。
パッケージも制作過程で落下テストなど必ず強度のテストを繰り返すんですね。そこで非常に構造の強度に強くなりました。そのノウハウを生かしてダンボール迷路やすべり台など、さまざまな遊具を制作しました。それがとても子どもたちに好評で。そこからキッズプラザ大阪でも年に4〜5回イベントをするように。ダンボールという素材が軽くてケガをしない素材なので子どもたちの遊具としてとても優秀だったんです。
正紀氏 数年前の絵本展でダンボールドームを見た子どもが僕のところにぶわぁっと走ってきて「おっちゃん!ぼくこれがずっとほしかったんや!」と興奮して言ってくれたんですね。「作り方を教えて!」って。その子に図面を描いて渡したことがすごく印象に残っています。そういう出会いが(絵本展には)あるんですね。
ーー作品づくりのポイントを教えてください
賢治氏 私たちはできるだけ作品に絵を描かないようにしてるんです。子どもたちの想像力を高めるきっかけになるかな、と思っていて。このシーソーもそうなんですけど、乗った時にゾウなのかキリンなのか馬なのか、必ず子どもたちは想像してるんですよね。もしかしたらパイロット(の気持ち)になっているかもしれない。それがこのシーソーにキリンの絵が描いてあると、キリンでしかなくなるんです。また、そこから想像したものを実際に見たいという意欲につながって、動物園に連れてって、となるわけです。大人は「馬だね」などと言わずに「何に乗ってるの?」って聞いてあげてほしいです。
ーーさまざまなしかけがあると聞きました
正紀氏 もう1つの特徴は『穴』なんです。穴を目の前にしたとき、どのような行動をするのか研究したこともあるんですが、5cm、8cm、10cmの穴を開けておくと、大人はのぞき込むんですけど、子どもは必ず手を突っ込みます。子どもは10cm以上でないとのぞかない。さらに30cm開いてると100人中100人くぐります(笑)。ですのでいろんなサイズの穴を作品の中に取り込んでいるんです。
またダンボールイスは、三角形の構造体を2つ組み合わせて土台を作っているんですが、三角が力学的に一番構造体として強いということを理屈ではなく感覚的に知ってほしいという思いがあって。その感覚が体験としてあれば、のちに勉強として学んだ時に理解が早いと思うんですよね。いろんな体験を幼少期にたくさんしてほしいです。どこか学びにつながる遊び、が私たちの大きなテーマですね。
ーー子どもたちとの関わりで注意すべきことは?
正紀氏 1つは答えを先回りして言わない、ことでしょうか。子どもがいろんな遊びに夢中になっているときに、いろんな注意をしなくていいと思うんです。危ないことは周囲の大人が気をつけてればいいので、ぜひ見守り、待ってあげてほしい。私自身が夢見る少年で、新聞紙1枚あれば、それで船を作って(空想の中で)世界中を旅して遊んでました。ですので、子どもの「夢をみる」という部分を崩したくないという思いが強いです。ワークショップしているときに目がキラキラする子どもがいたら、めっちゃ楽しいですね。
また、保護者のみなさんには、自分が小さな頃にすごく感激したり感動したことを同じように体験できる機会を与えていただけたらと思います。そのときも決して押し付けることがないよう気をつけていただければ。
ーー子どもたちの仕草や行動を分析し、まとめられた理由は?
正紀氏 制作を進める中で、子どもたちの仕草や行動を研究すれば子どものよろこぶ形ができるんじゃないか、と考えたんです。論文なども参考にしながら、子どもの行動パターンや動き、さらにはその想像力がどんな学びにつながっているのか、をまとめました。斜めになったところや段差を登ったり、狭いところに入ったりするとき、本当に子どもたちはいろんなことを想像し、学んでいるんですよ。子どもたちは運転手になった気持ちやパイロットになったり、大人が考える以上に想像していて、この想像力がめちゃくちゃ大事なんです。
幼稚園の先生方への講演では、先生方には「〜してはいけない」ではなく、子どもたちの行動をどのように促したり、見守るのか、そんなことをお伝えしています。
また有名な幼児教育「レッジョ・エミリア教育」を知りたいと思い、イタリアにも行ってきました。そこで、幼稚園の運営にデザイナーや科学者が関わっていること、幼少期から一流のデザインに触れる機会があること、また遊びながら学ぶしかけがたくさんあること、を知り本当に刺激を受けました。子どもたちが「なぜ?」と自分たちで考えて発想する豊かさがそこにあったんですよね。
子どもたちの豊かな育ち・学びに貢献したい
ーー今後の展望を教えてください
正紀氏 子どもたちは本当に真面目で清らかです。その子どもたちが目を輝かして夢中になって遊べる場づくりに貢献していきたいですね。今は小さな頃からデジタルデバイスに触れ、視覚から情報を得る機会が多いと思いますが、「触る情報」ってとても大事だと思っています。手を動かして触る体験を幼児期から低学年の間にたくさんしてほしい。絶対に大きくなったときに役立ちます。
2025年の万博会場でも、子どもたちが夢中になって遊べる空間づくりに貢献できれば楽しいなと思ってます。今もまた新しいダンボール遊具を制作中ですが、ダンボール素材でケガをすることはないですし、素材として最高だな、と思って段ボールのことばかり考えています。
子どものデザイン教育研究所
代表理事:北中正紀氏・ディレクター:北中賢治氏
活動拠点:大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟10-D-1-2(株式会社こふれ内)
https://coffret-design.co.jp/kids/
TEL:080-3913-5288(北中)
Email: odp02@osaka-design.co.jp