100PROJECT

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“アバター”と“ヒト”が共に暮らす社会をつくるための実証実験イベント「アバターまつり」

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

深層インタラクション総合研究所
京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2(けいはんな学研都市)
https://www.atr.jp/index.html

アバターまつり

https://avatar-ss-fes.iroobo.jp

アバター共生社会企業コンソーシアム

https://avatar-ss-c-cas2.iroobo.jp

プロジェクト概要

アバター100実証実験「アバターまつり」は、ムーンショット型研究開発事業目標1 研究開発プロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として、サイバネティックアバター(CA)による誰もが自在に活躍できる社会(アバター共生社会)の実現に向けて実施された大規模実証実験です。

「アバターとヒトが共に暮らす社会」を体験する実証実験イベント

今回は、国際電気通信基礎技術研究所 インタラクション科学研究所所長、アバター共生社会PJ研究開発項目7(実社会実証実験)課題推進者の宮下 敬宏氏にお話を伺いました。

ーー「アバターまつり」の概要について教えてください。

宮下氏 アバター100実証実験「アバターまつり」は、 “アバター”と“ヒト”が共に暮らす社会をつくるための実証実験イベントです。
100体以上のアバターが施設内を動きまわることで、一般の方々に「アバターとヒトが共に生きる社会(アバター共生社会)」を疑似体験してもらい、体験者からフィードバックを得ることを目的としています。
※2023年7月11日〜20日の間、ATCにて実施(メディア内覧会は7月10日)。

プロジェクトについて語る宮下氏

時間・場所・身体の制約に捉われない、アバターを介した新しい社会参加方法を体験する

これまで、人が何らかの社会参加をするには、「生身の身体」を使う方法がメインでした。しかし、サイバネティックアバター(CA)を使った新しい社会参加方法によって、時間・場所・身体の制約がなく、誰もが自在に活躍できる社会を実現できる可能性が見えてきました。これにより社会と繋がる手段が増え、全ての人々が条件や環境に応じて活躍できる社会を実現できるのではないかと考えています。そうした意味において、サイバネティックアバター(CA)技術は、「社会参加方法の選択肢を増やす技術」であると私たちは考えています。

イベントでは、高齢者を含む一般の方々が、サイバネティックアバター(遠隔操作ができるロボットやCGエージェント)を介して、施設案内、店舗案内、店舗内で接客したり、サイバネティックアバター(CA)を介して、お客さんとして新たな社会参加方法を体験していただきました。

アバターとヒトが共に生きる社会(アバター共生社会)のイメージ

漫画でわかる「アバター共生社会」

「バーチャル空間」「リアル空間」の両方に存在するサイバネティックアバター(CA)

ーー「サイバネティックアバター(遠隔操作ができるロボットやCGエージェント)」について、詳しく教えてください。

宮下氏 私たちがアバターと呼んでいるものは、正式には「サイバネティックアバター(CA)」と言います。「サイバネティクス」と「アバター」の2つの言葉を組み合わせた新しい言葉です。

アバターには、化身・分身といった意味がありますが、一般的にアバターと聞くとメタバースやゲームなどに登場する「CGアバター」をイメージされる方が多いと思います。自分の分身を仮想空間で自由に動かし、コミュニケーションを楽しむという使われ方ですね。
またリアル空間での分身でいうと、一般的には「ロボットアバター」、「アバターロボット」と呼ばれるものがひとつの分野です。
アバターというと、どうしてもバーチャル空間に寄って認識されてしまうのが現状ですので、「両方ですよ」ということを改めて意識していただくという意味でも、「サイバネティックアバター(CA:遠隔操作ができるロボットやCGエージェント)」という名前をつけて、両方の空間のアバターを表すものとして使っています。

また、サイバネティクスというのは、人間と機械を統一的に扱う学問領域ですので、アバターを通じて人間の新しい社会参加方法を広げるという私たちのミッションともマッチします。こうした意味においても「サイバネティックアバター(CA)」は、私たちのプロジェクトの内容を的確に表現した言葉だと思っています。

ーーアバターまつりでは、どのような「サイバネティックアバター(CA)」が活躍していたのでしょうか?

宮下氏 アバターとして活動していたのは、104体です。
内訳としては、「CGエージェント60体」、「小型ロボット33体」、「移動型ロボット3体」、「アンドロイド型ロボット1体」「パペット型ロボット3体」、「対話型ロボット3体」、「介護型ロボット1体」になります。

実験で使用されたアバターたち

ーーどのような実証内容だったのでしょうか?

宮下氏 全部で12の実証実験を行ったのですが、いずれも「新しい社会参加の方法を広げる」ことがテーマになっていますので、人が遠隔操作をしてアバターを動かしていました。来場者は、アバターを操作する側としても参加できますし、アバターから接客されるというお客さん体験もしていただきました。

CGエージェントを、サイネージの後ろから人が遠隔操作している様子

ATC2階にも設置し、そこから遠隔操作し来場者にアバターを介して話かけていた

遠隔操作の考え方は、アバターが部分的に自律で動いていて(半自律)、自動で対応できない部分を人間が遠隔で対応するという内容になっています。例えば、マニュアルがあるものは自律で対応し、マニュアルにないイレギュラーな質問をされたりすると、人間がアバターを介して質問に答えるといった対応が取れます。このように、自動で応答する部分が賢くなればなるほど、遠隔操作者の負担は減っていくと考えています。そして、一人で一度に複数台のアバターを同時操作することができれば、働き方の広がりに加えて、生産性向上、人手不足の解消も期待できます。

一般の方のアバターに対する認識を知れたことが、研究開発の大きな一歩に

ーー一般の方の反応はいかがでしたか?

宮下氏 パンフレットを受け取っていただいた方へ、アンケート調査を行いました。男女回答がほぼ半々、加えて幅広い世代の方々に満遍なく、600名以上の方に答えていただきました。それらを踏まえて、私たちが一番驚いたのは「アバターを“人”が操作するものだということを知らなかった。」という回答が非常に多かったことです。また、「アバターという言葉を聞いたことはあるが、それについて説明できない。」という人が大半だという結果にも驚きました。私たち研究者の間では、一般の方々のアバターの基本的な認知はほぼ完了していると思っていたので……。
事実と頭の中で考えることは大きく違う。これが実証実験の一番大きなポイントです。研究者と一般の方々とのアバターに関する認識のズレがわかったことは、ものすごく意義のあることだと思っています。

また、アンケート項目の中で、遠隔操作体験をすること、アバターと対話することで、自分の意識が変わったと答えた方が約75%いました。この回答者に意識が変わったポイントを聞く設問では「アバターは人が操作している。」「アバターには色々な種類・形がある。」「一人で複数台の操作ができる。」「様々な立場の人がアバターを介して働ける。」ということがわかったと答えていました。また、「コミュニケーションや人のつながりがアバターで広がると感じた。」とも答えていました。
こうしたアバターの基本的な理解が進み、新たな社会参加の方法や、自分の生き方がアバターを介して少し変わるんだ、ということを理解していただけたのは大きな一歩だと思います。

ーー研究者や学会などの反応はいかがでしたか?

宮下氏 今回の実証実験は、100台以上のものアバターを、ネットワークを通じて同じ場所で同時に動かすというもの。これはひとつのチャレンジでもありました。
今までも街の色々な場所にアバターを置いたり、工場などの特定の場所の中で動かす、などといった取り組み事例はありました。しかし、サービス系のロボット(あるいはアバター)が、常にネットワークを使った状態で100台以上が10日間以上も動いている、というのは、相当な技術的チャレンジです。世界中でも類を見ないと言ってもいいくらいの非常に強いインパクトです。
どの学会で話しても、皆さん驚かれます(笑)

ーー今後の展望について教えてください。

宮下氏 この研究開発自体は、2020年12月からムーンショット型研究開発事業としてスタートしました。現在2年半ほどの間に、約60回の実証実験をさまざまな場所で実施してきました。

昨年までは、まだ大々的に世の中に出すというフェーズではなかったので、ご協力いただいた施設内で小さめの実証実験を実施していました。このアバターまつりという大規模実証実験を皮切りに、色々な人たちにこの技術を使ってもらいブラッシュアップをしていくというフェーズに切り替わったと思います。そして、このプロジェクトでは、2025年大阪・関西万博での長期実証実験を計画しています。長期実証実験を含む5年間で研究開発できることは限られていますので、この期間中に仲間となる企業を増やし、研究した技術をビジネスやサービスに展開できることを知ってもらい、可能性を示していきたいと考えています。

ーー最後に。メッセージをお願いします。

宮下氏 企業連携を図るため、アバター共生社会企業コンソーシアムをプロジェクト開始と同時に立ち上げ活動を続けてきました。おかげさまで、コンソーシアム参画企業は110法人を超え、ヘルスケア分科会、教育分科会、ITインフラ分科会といった複数の分科会も動きはじめました。このコンソーシアムでは、アバター技術が各業界でどのように役立てられるかを議論し、社会実装に向けて検討・実証しています。定期的に実施している情報交流会も、多くの方に視聴いただいています。(一部アーカイブ動画公開中)

アバターと共に暮らし、アバターを介して様々な方が社会参加できる時代が、もうすぐそこまで来ています。
もしご興味を持った方がいらっしゃいましたら、WEBサイトをご覧ください。

本日はありがとうございました。

株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)

深層インタラクション総合研究所
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アバター共生社会企業コンソーシアム

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